歌川広重「写実的な絵は、絵ではない」


鼠よけの猫の上に書いている文字は?

kuniyoshi

2/15-3/5まで、湯島ねこまつり開催中

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筆ペンで、歌川国芳の「鼠よけの猫」という絵を、筆ペンでなぞり描きするというワークショップを開催しています(2017/2/15-3/5 予約推奨)。

猫の上にはなんと書いてある?

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猫の絵の上には以下のように書かれています(たぶん)。

原文 現代文体
此(この)図(づ)ハ猫(ねこ)の絵(え)尓妙(めう)を
得(え)し一勇斎(いちゆうさい)の写真(しやううつし)の圖(づ)尓して
古連(これ)を家内(可ない)に張(者り)おく
時(とき)尓ハ鼠(ねず三)もこれを三れバ
おの川゛とおそれを奈し
次第(し多い)尓春く奈くなりて
出(いづ)る事(こと)なし たとへ
出(いづ)るともいたづらを
けつしてせ春゛ 誠(ま古と)尓
妙(めう)なる圖(づ)なり
福川堂記
一勇斎国芳画
この図は猫の絵に妙を得し
一勇斎の写真の図にして、
これを家内にはりおく時には、
鼠もこれを見れば、
おのづとおそれをなし、
次第にすくなくなりて出る事なし。
たとへ出るとも、いたづらをけつしてせず、
誠に妙なる図なり。

福川堂 記
一勇斎国芳 画※一勇斎 国芳のこと

変体仮名の現代文変換(≒今50音以外の、古いひらがなを言う)

尓 = に
古 = こ
連 = れ
三 = み
川゛= ず
多゛= だ
春 = す
奈 = な
春゛= ず

福川堂とは、大衆本を売っていた地本(じほん)問屋川口屋宇兵衛のことらしいです。

漢字に濁点を打っていた

ふりがなが打ってあります。

たぶん、庶民が読めるようにしてるんだと思います。

逆に言えば、庶民が文字を読めたということですね(上流階級はふりがな不要だからね)。

また、現代文と違って、漢字に濁点を打っていたこともわかりますね(点線丸)。

こういうことを学校で一切教えてない、テストに出ない日本の教育に違和感を持ちます。

日本の書き文字の歴史を知らなくても文科省の官僚になれちゃうわけです。

知らないから重要性も、その貴重さもわからないままです。

「写真」という言葉のルーツ

「写真」を「しょううつし」と発音していたことがわかりますね(点線四角)。

「写真」は「真を写したもの(写実的な絵)」という漢文のようです。

(「しょううつし」は「真写」と書いているならわかるのですけどね(笑)「真写(しんしゃ)」物事をありのままに写しとること。 という熟語もあります)。

日本の写真の伝来は以下のようです。

1839年 銀板写真の発明

1843年 オランダ船から長崎に日本最初の写真機材を輸入

そのため、これが書かれたころの写真の意味は「真を写したもの」という意味でしょう。。

広重「見たままを、写実的に写し描きしたものは絵ではない。」

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「絵本手引草」(1849年?)の冒頭で、歌川広重(1797年- 1858年)は「画は物の形を本とす。なれば寫真(志やううつし)をなして、これに筆意を加うる時はすなわち画(え)なり」と記載してるものがあります。

つまり、「見たままを写実的に描いたものは絵ではない。筆意を加えたものが絵である」という意味です。

発行された時期から考えて、写真の存在を知っていたのでしょうか?

どちらにしても、当時は、白黒のひどいものなので、現在のような写真の発明で、絵が写実的表現から開放されたというわけでもない時代です。

「写実的な絵は、絵ではない」と明確に言い切れる広重に驚きます。

当時のヨーロッパの画壇が、広重らの絵を見て、この意図は作品を通じて明確に伝わったはずです。

私は、若い頃、同時代にヨーロッパは写真のような写実的な絵なのに、日本はデフォルメした絵で西洋に劣っていたと思っていました。(そう思っている人は、実に、多いと思います。)

通常は、「写実→デフォルメ」という進化をするはずが、日本は、写実の時代があまりなくスキップして、いきなりデフォルメという絵の真理に近づいていたというのは、本当にすごいことだと思います。

しかし、明治維新で、文明開化の時代になって浮世絵が廃れていきます。

同時に、世界最高の普及率だった和様御家流も廃れます。

日本が最も進んだ文化を持っていた国とは気づかないまま、欧米化してしまった感じがします。

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